Tuesday, April 12, 2016

「正社員が増えると暮らしが不安定になる。」

雇用形態については色々と議論されているわけですが、その一つとして、安定した生活のためには正社員としての雇用が必要といった意見があります。確かに安定した、ある程度の生活を送るのに十分な収入があれば、生活も安定してくるように思われます。

しかし、実際には「正社員が増えると暮らしが不安定になる。」可能性があります。

まず前提として理解する必要があるのは、(1)社会全体のリスクは増えている、(2)リスクを消滅させることはできない(移転、回避、保有はできる)ということです。
社会全体のリスクという観点でいうと、社会が豊かになり、生活水準に対する期待値が上がれば上がるほど、それが満たされないというリスクが増えているという点が一つと、グローバル化や情報化が社会全体の変化を起こしやすくし、それゆえにさまざまな現象の振れ幅が増えてリスクが増加しているという点があるでしょう。
一方で、リスクを消滅させることが出来ないというのは、社会の変化自体をなくすことは困難であるし、社会全体のリスクというのは、他のものと組み合わせて相殺するといったこともできないわけです。
そうすると、既にあって増え続けているリスクをどのように分配するのか、すなわち、生活保護のようなセーフティーネットに担保させるのか、社会と関わらないで自給自足で生きていくのか、それとも困ったときのために金融資本や人的資本を手元に持っておくのか、が問題となるわけです。

「正社員を増やそう」というのはリスクの観点からいうと、被雇用者個人のリスクを事業会社に移転するということになるので、社会全体のリスク量が変わらないという前提に立つと、正社員を増やせば増やすほど会社の経営は不安定になり、倒産、リストラ、減給のリスクが高まってしまうわけです。あるいは、そうならないように政府が正社員を増やした会社を支援すべきだという考え方もあるでしょう。しかし、この場合も会社のリスクを政府に移転しているだけですし、政府の支出はもとはといえば税金になるので、他の政府支出の切り詰めか、将来の支出の前借り(すなわち国債)でしかないわけです。回りまわって、税金が増えて生活が苦しくなる、という寸法ですから、結局は旨い話はないということになります。
その一方で、将来の日本の財政なんか気にしないで、正社員を増やしたらよい、であるとか、会社が10年後に倒産してもいいから、とにかく雇用せよというのも一つの考え方です。これはどのような社会にデザインするかという問題であって、ミクロで見れば個人ごとに損得はあるわけですが、マクロには収支は変わらない話です。ただ、こういったマクロで何を目指すべきかという議論を抜きに、雇用の問題を考えても結局は徒労に終わるのではないでしょうか。

とはいえ、どうにかならないか、と考えるには、リスクをどうにかする方法はないかということでしょう。リスクを減らすあるいは従来とは違った方法でリスクの影響を最小化する方法を考えるということになります。一つは、個人主義をやめて共同体ベースの前近代的な社会へ帰っていくことかもしれません。もちろん、そのまま帰っていくことは難しいでしょうから、発展してきた情報通信技術を使った共同体が力を持つようになれば良いのかもしれません。とはいえ、日本人は他人を平気で切り捨てる部分があるため、ちょっと困っている人がいるから自分の分を我慢して助けよう、となるかというとどうなのでしょうか。今度の旅行を諦めて地域のために資金と時間を使おうといったことが出来る人がどれだけいるのか、というとは現実は簡単ではありませんね。簡単に解決できる問題ではないように思います。

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